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片手のひらに軽く一杯で健康に ナッツともっと仲良くなろう

『日経ヘルス』『日経ヘルスプルミエ』の元編集長で、現在も食品関係を中心に多方面で活躍される、健康医療ジャーナリストの西沢邦浩さんを迎え、「食と健康」についてデータに基づいた情報を発信します。今回のテーマは『ナッツ』。小さいながらもパワーに満ちたナッツについて深掘りします。

2022年3月

健康医療ジャーナリスト 西沢 邦浩

くるみ、アーモンド、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、カシューナッツ、ピーナッツ(落花生、厳密には豆の仲間)……。

皆さんはナッツに対してどのようなイメージをお持ちですか。

お酒のおつまみ、コーヒーや紅茶の付け合わせ? 食べすぎると「太る」「ニキビができる」なんていうイメージを持つ人もいるかもしれません。

いずれにしても、日本ではナッツが“健康にいい食品”、“積極的にとるべき食品”としてしっかり位置付けられていないように思えます。

実際、“何をどれだけ食べたらよいか”という指針として、2005年に農林水産省と厚生労働省が作った「食事バランスガイド」もナッツには触れていません。

一方で、例えば世界で最も健康効果に関するデータが蓄積されている伝統的地中海食では、毎日しっかり食べるべき食品として全粒穀物、果物、野菜、オリーブオイルとともにナッツが挙げられています。

それどころか、ナッツは地中海食を構成する食品の中でも重要と考えられているため、地中海食メニューにナッツ類1日 30 g(くるみ 15 g、アーモンド 7.5 g、ヘーゼルナッツ 7.5 g)をプラスした場合と、エクストラバージンオリーブオイルを1 日 50 ㎖をプラスした場合で、心血管疾患を防ぐ効果は高まるかを検証する約5年にわたる試験が実施されたこともあります。

約7500人(年齢 55~80 歳)が参加したこの試験の結果は、ナッツ群もオリーブオイル群も、比較対象になった低脂肪食群(この食事も十分健康的!)に比べ、約30%心血管疾患による死亡率が低下しました(2013年にThe New England Journal of Medicineに発表)。やはりどちらも、地中海食の健康パワーに欠かせない食品だったというわけです。

毎日片手のひらに乗る分ほどのナッツを食べれば、いくつもの疾患リスクが下がる

本コラムの「データが証明した、もっとも健康維持に欠かせない食品とは? https://www.fresta.co.jp/healthyproject/2543」(2021年2月)の回で紹介した、健康寿命を短くする原因として影響が大きい食事スタイルは何か、という世界中のデータをもとに分析した研究の結果を改めて見てみましょう。

リスクの1位は全粒穀物不足でしたが、4位に位置するのは「ナッツと種(シード)の摂取不足」です。

なんと野菜不足(5位)、魚に含まれるω3脂肪酸不足(6位)より、健康寿命への影響が大きい項目になっているのです。

しかもナッツは、太ることを気にするほど食べなくても健康に寄与してくれる優れもの。

先に挙げた地中海食をベースにした研究は1日30gのナッツを加えてその効果を見ようとしていましたが、これまでに行われたナッツに関するいろいろな研究を踏まえても、1日25~30gくらいの量で充分健康維持に役立つと言えそうです。

20件の研究とその被験者計31万5000人分のデータを統合解析したところ、ナッツを1日1サービング(28g)程度食べると、多くの疾患による死亡率が低下するという結果が出ています。冠状動脈性心臓病で29%、脳卒中11%、心血管疾患19%、がんでは18%の死亡率低下がみられたとのこと(2016年にBMC Medicineというジャーナルで発表)。

米国で約2万人を4年間追跡した調査では、ナッツを1日14g食べるだけで、体重増加が有意に抑えられるという結果も出ています。赤身の肉、加工肉、フライドポテトといった食品をナッツに置き換えるとこの効果はさらに高まるとのこと(2019年BMJ Nutrition, Prevention & Health)。

ナッツ1日約25~30gで、ほぼ片手のひら一杯分。カロリーで言っても150~200kcal程度。

こんなにコンパクトな量でヘルシーな効果が期待できる食品はそうそうありません。

どうしてナッツはすごいのか

どうしてナッツはこの程度の量でも広く疾患リスクを下げる働きが期待できるのでしょうか。

ナッツに含まれるお役立ち成分として挙げられるものには、不飽和脂肪酸、たんぱく質、食物繊維、ビタミンE、カリウムやマグネシウムといったミネラル、ポリフェノールなどの抗酸化物質があります。こうした重要な栄養素がサプリメントのように濃縮して詰まっているのがナッツだからと言えそうです。

なかでも、世界的に健康効果が研究され、手に入りやすく使い勝手もいい2大ナッツがアーモンドとくるみではないでしょうか。

それぞれの特徴を見てみましょう。

<アーモンド>

「アーモンド(煎り/無塩)」は、100gにたんぱく質20.3g、食物繊維を11g含む「高たんぱく高ファイバー食品」。さらに、一緒に働いて体のバランス調整を行うカルシウムを260㎎、マグネシウムを310㎎含みます。抗酸化ビタミンのαトコフェロール(ビタミンE)も29㎎、長寿遺伝子活性化や脳機能維持といった働きが新たに見出されている一価不飽和脂肪酸のオレイン酸を35.09g含みます(以上、日本食品成分表2020年版より)。茶色い皮にはお茶や赤ワイン並みの量のポリフェノールも!

1日約60gアーモンドを摂取したいくつかの試験では、空腹時の血漿インスリン濃度、インスリン抵抗性など糖代謝関連の指標改善や腸内細菌叢、メンタル面への好影響が報告されています。

最近は、飲み物として楽しめるアーモンドミルクの人気も急上昇中。

<くるみ>

何と言っても私たち日本人との長い付き合いがあるナッツ。縄文時代以前から食べられていたことがわかっています。アーモンド同様、糖代謝が改善し、心血管疾患のリスクが下がるという研究が多く見られます。      

「くるみ(煎り)」100gには、食物繊維7.5g たんぱく質14.6g、マグネシウム150㎎が含まれます。これらの栄養素の含有量こそアーモンドより少なめですが、ナッツ類では断トツにω3脂肪酸(α-リノレン酸)を多く含みます(8.96g、以上日本食品成分表2020年版より)。α-リノレン酸には心血管を守るという研究が多くありますが、日本では「血圧を下げる」「悪玉(LDL)コレステロールを下げる」という機能性表示食品が発売されています。2.2~2.6gの摂取でこのような機能性をうたっている商品が多いので、くるみ片手のひら一杯分でとれる量ですね。

もう一つ、くるみで注目の成分がポリフェノールのエラグ酸。この成分は、2021年11月のコラム「イチゴ、ブルーベリー、クランベリー・・・・ 人生をハッピー&ヘルシーにしてくれるベリーの魅力 https://www.fresta.co.jp/healthyproject/8640」でご紹介しました。内臓脂肪を減らしたり、末梢血流を改善する機能性表示食品成分になっていること、この成分が腸内細菌に代謝されるとウロリチンという健康寿命延伸に役立つ物質に変わるスーパー成分です。エラグ酸をベリー類以外で多く含む代表的な食品がくるみなのです(100gに36~59㎎)。

小さいながらもパワーに満ちたナッツ、お酒のあてやおやつとしてつまむだけでなく料理のアクセントとしても積極的に使っていきたいですね。

人気のアーモンドミルクを味噌汁やクリームスープなどに入れるとコクと旨味が増しますが、私の生まれ故郷長野ではくるみをペースト状にし、蕎麦つゆに入れて香りコクを楽しみます。

パンやお菓子はもちろん、サラダ、炒め物などいろいろな料理に使って、もっともっとナッツと仲良くなりたいですね。

私が好きな常備菜は、「じゃこ昆布ナッツ」。

ちりめんじゃこに出汁を引いた後の昆布を千切りにして加え、弱火で数分空煎りします。ここにくるみやカシューナッツ、アーモンドなどを砕いて加え、カラッとなるまで煎って塩コショウを少々。昆布の食物繊維と旨味、じゃこのω3やカルシウムなども加わり、とても健康的かつ食感も楽しい一品に。おつまみとしてもいけるし、ご飯に混ぜておむすびにしてもおいしいですよ。