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おやつはとり方次第! おいしい&ヘルシーライフの味方につけよう

『日経ヘルス』『日経ヘルスプルミエ』の元編集長で、現在も食品関係を中心に多方面で活躍される、健康医療ジャーナリストの西沢邦浩さんを迎え、「食と健康」についてデータに基づいた情報を発信します。今回のテーマは『おやつ』。私たちの日常に当たり前にあるおやつに注目です!

2021年10月

健康医療ジャーナリスト 西沢 邦浩

皆さんにとって「おやつ」とは何ですか?

江戸時代に「八つ刻(午後2~3時くらい)」にとっていた間食が「おやつ」という名称で定着したとされていますが、そもそも江戸時代以前は朝夕の1日2食というのが普通でした。今に比べ体を動かすことが多かった時代ゆえに、間食は中食(ちゅうじき)などと呼ばれ重要な位置づけだったようです。

3食が定着した現代でも、朝食を欠食する人も多く、加工度の高い食品やファストフードの広がりで栄養も偏りがち。そんな中、改めておやつは不足しがちな栄養素の補給源としても注目されています。

後で具体的な考え方を紹介しますが、米国では「ヘルシー・スナッキング」という言葉が定着しているほど。

一方、おやつの内容と食べ方次第では、余計に糖や脂肪をとってしまい、肥満や不調の原因になることも。

おやつに罪悪感を感じてしまうわけ

もともと「おやつ」は小腹を満たす間食全般を指していたわけですが、今では、デザート類や菓子パンも含め「お菓子」という言葉と同義語のように使われることも多くなっています。

現代では、お菓子に対する家計支出金額が、米などの主食より大きいのはご存じでしょうか。

2020年の家計調査を見ると、広島県を含む中国地方で、二人以上の世帯がお菓子にかける金額はなんと年間約8万円! 米の購入にあてる金額約2万円の4倍にのぼります。米以外の主食であるパンには約3万円、麺には約2万円支出していますが、これらを合わせた金額より、お菓子の購入金額は大きいのです。

どんなお菓子(おやつ)を選ぶかが、健康にも大きく影響しそうですね。

下記は30、40代女性読者が多い『日経ヘルス』で実施した「間食に関する調査」の一部。そもそも「間食を全くしない」と答えたのはたった1%。8割強が間食をしていて、気分転換やストレス緩和など大切な役割を期待しつつも、「たくさん食べると太る」という罪悪感が先に立つようです。

確かに選び方・食べ方によっては肥満の原因になることもあるでしょうし、「お菓子の食べ過ぎでうつ傾向が強まる」という、最近、英国の栄養学専門誌に発表された、福岡女子大学による報告もあります。千葉県と神奈川県の企業で働く911人を3年間追跡した研究で、お菓子を最も多く食べる人たちは、最も少ない人たちに比べ、1.78倍うつになるリスクが高いという結果でした。

健康を支えてくれるおやつとは

では、どんなおやつを、どのようにとると健康に寄与してくれるのでしょうか?

今から5年ほど前に何社かのお菓子メーカーなどと、日本人に合った「ヘルシー・スナッキング」を提案するプロジェクトを始めたのですが、そのときに議論をしてまとめた3条件が下記です。

●「質」 食物繊維やたんぱく質が多く血糖値が急上昇しない。噛み応えがあり、現代人に不足しがちなビタミンやミネラルの補給ができることが望ましい

●「量」 1回200kcal程度までに(手のひらに乗るくらいの量)

●「タイミング」 お腹がすき過ぎる前にとり、間食をする時間帯は3食の間を基本に

もちろん、おいしいことや息抜きになるおやつであることも大切です。また、子供は運動量が多いし、育ち盛りですから、200kcaという「量」も含めてあまり神経質になる必要はありません。

そもそも200kcalというのは、農林水産省が「食事バランスガイド」で示している数字で、確かに間食の適正量としては妥当だと思います。ただし、農水省は1回でなく「1日200kcal以内」としていますが、お腹のすき具合によって、1日2回とってもいいはず。1日通して見たときにカロリーオーバーかなと感じたら、夕食などでそのカロリー分を減らすようにすればいいのです。

お腹の減りすぎに要注意

私は、「何か一つだけ食事で健康にいいことをやるとしたら?」と聞かれたら、「お腹がすいてから食べること」と答えます。ヒトの体は、空腹になったときに、お腹で便通を促すスイッチが入ったり、体を構成する個々の細胞ではゴミ処理が始まるといったリセットが行われるようになっているからです。健康寿命延長につながるサーチュインという遺伝子が働きだすこともわかってきました。お腹がグーッと鳴るのは、体の健康維持機構が動き出した合図なのです。

逆に言うと、お腹が減ってもいないのにいつも何か口にしているような生活は、便秘ばかりか、肥満や老化を進めることになりかねません。

でも、空腹時間が長くなりすぎたときは注意が必要です。血糖値の低下によってイライラが強くなり、集中度が落ちたという経験がある人も多いと思いますが(子供でもテストの結果が下がったという研究があります)、こんなことも起こります。

「遊離脂肪酸という物質が増える」→「遊離脂肪酸が空腹信号として作用し、次の食事でドカ食いを促す」→「遊離脂肪酸は血糖値を低下させるインスリンというホルモンの働きを悪くするので、血糖値も上がりやすくなる」

つまり、お腹ペコペコ状態が長く続いたあとの食事は、食べ過ぎて、しかも血糖値が急上昇するリスクがあるのです。

こんな状態を招かないためにもおやつは大切。

でも、おやつで血糖値が急上昇したら元も子もないので、糖質だらけの甘いお菓子でなく、食物繊維やたんぱく質が多いものがよさそう。そのうえ、おやつで食物繊維をとっておくと、次のご飯の血糖値上昇が抑えられることも確認されています(下グラフ)。

食物繊維たっぷりおやつ後の夕食では血糖値が上がりにくい

  (出典:Foods. 2020 Oct; 9(10): 1500.)

9人が実験に参加して、午後のおやつに「食物繊維がたっぷり入ったビスケットを食べた場合」と「ほとんど入っていないビスケットを食べた場合」で、その後の夕食の血糖値上昇を見たところ、前者のほうが緩やかだった。グラフの縦軸の数字は血糖値、横軸の数字は夕食後の時間経過。

また、噛む回数が多くなると満腹中枢が刺激されて空腹感を感じにくいこと、現代人が不足しがちなビタミン・ミネラルもとれること、といった条件も加えてお勧めのおやつを考えると、「豆やナッツ、ドライフルーツ、スルメといった加工度の低い素材を使ったお菓子」、「皮付きの(丸のままの)果物」「食物繊維が多いカカオ高配合のチョコレート、全粒穀物入りのバータイプ菓子」「高たんぱくなチーズやヨーグルト(乳製品)」などになりそうです。

でも、おやつを食べた後に運動や体を動かす仕事をするとき、元気に遊びまわる子供が食べる場合は、食べ過ぎなければ、少々砂糖などの糖質が多めに入っていてもそんなに気にすることはありません。

おいしいおやつを上手に取り入れて、もっと楽しく!もっと健康に!