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Q&A① 健康関連情報との付き合い方

『日経ヘルス』『日経ヘルスプルミエ』の元編集長で、現在も食品関係を中心に多方面で活躍される、健康医療ジャーナリストの西沢邦浩さんを迎え、「食と健康」についてデータに基づいた情報を発信します。第6 回目は、少し趣向を変え、お客様からスマイルネット倶楽部のアンケートでいただいたご質問に、西沢先生にお答えいただきます。

2021年4月

健康医療ジャーナリスト 西沢邦浩

 今回は、読者の方からいただいたご質問にお答えします。

「健康情報があふれているが何を信頼したらいいのか、どれが自分に合っているかがわからない。自分で調べる際の注意点や信頼できるリソースはありますか?」
という内容です。

 とても大切な姿勢ですね。確かに信頼に欠ける情報も多いのが健康や食の分野。TwitterやFacebookなどSNSを通してだれでも発信者になれる時代ゆえに、情報量も幾何級数的に増えました。また、Googleなどの検索サイトで調べても、信頼に足る情報が上位に来るわけではありません。だからこそ、関心を持った食品や健康法に関しては自分で調べることが不可欠なのです。

健康、食品関連情報の落とし穴

 実際に発信されて話題になった健康情報のケースを一つ引いてみましょう。かなり名が知れた方がブログに投稿して拡散した情報です。あるサプリメントについて説明したものですが、具体的な名称などは伏せ、処理をした形で示します。

「私がとっているサプリメントについてご紹介したいと思います。私たちの体を構成するすべての細胞の活動には○○(サプリメントの成分が書いてある)の働きが不可欠ですが、現代の食生活では これを摂取することができないのが実情らしいのです。だからそれをサプリで補うわけです。
私は科学的なデータがないと信用しないタイプなので、色々資料を読んだ結果、数あるサプリメントの中からこれを選びました。○○新聞でも大きく取り上げられましたし、○○テレビのニュースでも研究発表の模様が放送されていました。
今多くの国が予算を割いて研究を行っているのが、この○○らしいです」

 信頼できる要素はありそうですか? 元々の文章をだいぶ短くし処理もしてありますので、“もっともらしい臨場感”も消えてしまっており、だれが読んでも「いい加減な文章だな」と思ったかもしれません。

 では、どこがおかしいでしょうか?

 いろいろありますが、下記の2点は特にいただけません。
①「~らしい」という言葉が2回使われている
②〇〇新聞、〇〇テレビで取り上げられたことを、信じる根拠にしている
まず①は自分が発信者になっているのに、流そうとしている情報の真偽を直接確認していないから。

 なんらかの科学的根拠をベースに機能性や効果が示される健康・医療ジャンルにおいて「~らしい」「~といわれている」という表現を使うのはタブーだと思ってください。こうした表現を使う人は「私は無責任に伝聞情報を流してます」と白状しているようなもの。

 根拠となる情報(研究報告やデータといった一次情報)を自分で確かめていないわけですね。ちょっと気を付けてチェックするだけで、この表現が氾濫していることに驚くのではないでしょうか。

 ②は、メディアで記事や番組になっていたり、どんなに権威がある人が語った情報でも、 独自に行った研究や調査でない限り、取材や情報収集を通して得た二次情報(間接的情報)だということに留意してください。つまり、そのメディアやコメンテーターのとらえ方や意見が反映された情報になっている可能性が高いのです。

 そもそも例に挙げた情報を流した方は、メディアとか国家などある種の権威がからむと信じるタイプのようですが、それにしても、ほかの方に何かを勧めるときは、必ず自分で研究論文や調査といった原典に当たり、情報の真偽を確認する必要があります。

 これは、皆さんが発信者になるときも重要なポイントです。

 情報を見極めるポイントを二つ挙げました。

 ポイントはきりがないほどあるので、あと2つだけ気を付けるべき点を示します。

 ③「絶対に効果がある」「必ず効果が得られる」という表現 どんな薬、健康法、食品でも、100%効くということはありえません。また、今日真実とされていることでも、明日新しい研究が出て覆ることすらあるのが科学の世界です。

 食品に好き嫌いがあるように、同じ食品や栄養素をとっても効果が出る人と出ない人がいます。「その栄養素が足りていたか、不足していたか」「その食品の消化吸収力や腸内細菌叢に差がある」「生活習慣が違う」など多くの要素が関係してくるからです。

 つまり、健康情報に関して、“絶対”という表現を使っていること自体が怪しい。

 ④効果があったという体験談が並んでいる 同じ食品や栄養素でもその効果は個人差がある、と書きましたが、きちんとした評価試験の結果が並記されず、ただ体験だけ並べてあるということは、特にいい結果だけを意図的に選んで伝えている可能性があります。体験談では、あなたに効くかどうかはまったくわかりません。

気を付けたい点はほかにもたくさんありますが、「地雷」がどんな顔つきをしているか、その傾向はわかっていただけたのでは?

何を信頼すればいい? 調べ方は?

 では、どんな情報収集をし、どう判断したいいのか?

 先にも触れたように、科学的根拠も、次々と出てくる研究によって常に揺れ動いています。そうしたことを念頭に置いた場合、原典の情報も含め開示されている情報源を手掛かりにしつつ調べていくのが王道です。

 たとえば、健康法や食品、栄養素などの効果を世界中のヒト試験データをもとに分析した結果が日本語で読めるサイトがあります。
●厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』eJIM
https://www.ejim.ncgg.go.jp/doc/index.html

 ここで「健康食品」というページに行くと、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所所が運営する『「健康食品」の安全性・有効性情報』といった公的な情報サイトが紹介されています。

 また「コクランレビュー」というページに行くと、世界の医学論文を集めて分析した結果が、日本語で読めるようになっています。

 目、歯、メンタルといった部位、もしくはがんや婦人科疾患などの疾患別で調べられます。

 ただし、必ずしも調べたい情報があるとは限りません。

 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所所が、世界の健康・栄養関連の研究ニュースをアップしているサイトもあります。
●リンク・デ・ダイエット
https://www.nibiohn.go.jp/eiken/linkdediet/

 このサイトには「自分で探してみよう」という表示もあって、ここから、世界の生命科学分野(医療から運動や食などまで)の論文データベース「PuMed」(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/)にも行けるようになっています。言語は英語です。

 食品や栄養素の機能性を調べてみたいなら、今出ている機能性表示食品を成分や食品で検索できるサイトもあります。機能性表示食品として消費者庁に受理されているということは、受理されるに足るヒト試験結果などがあるはず。

 それぞれの商品のページに行くと、どんな成分が機能性を発揮し、どんな試験データがあるのかがたどれるようになっています。健康食品タイプの商品だけでなく、農水産物もあります。

●機能性表示食品データベース
https://db.plusaid.jp/foods

 3つサイトを挙げましたが、どれを使っても、調べたいことが必ずわかるわけではありません。そこまで完璧な情報源はありません。でも、どういう情報を積み重ねないと「信頼できる情報」に近づかないのか、というツボはわかってくるでしょう。新しい情報に接したときに、「あれこの食品はまだ、ヒトで効果があるかどうかは確かめられていないんだな」といった判断ができるようになると思います。

 そのうえで、科学的根拠の元となる研究論文そのものに当たってみたいと思われたら、先に出た「PubMed」で、調べたいキーワードを英語で入れて、世界でどんな研究論文が出ているのかを調べられます。

 ちなみに、日本で発表された研究論文は「CiNii」というデータベースで検索できます(https://ci.nii.ac.jp/)。

 ここまで読まれて、「結局、手軽な情報源がないじゃないか」と思った方が多いかも。

 その通り。信頼できる情報にたどり着くのに近道はありません。

 本来注意事項や例外も含めて説明すべきなのに、メリット(効果)だけを簡潔にまとめてあるサイトがあったら、そのサイトはあなたにとって重要な情報を勝手にそぎ落としてしまっているかもしれない。

 最後に、質問の中にあった「自分にどれが合うか」ということの調べ方。

 これはさらに難しい。

 必要な情報を集め、安全性を確認したら、最後は自分で試してみるしかありません。

 あなたは、常日頃から、自分の心身が発する声に耳を傾けていますか?

 お腹が減ってもいないのにだらだら食べていたり、体は休んでほしいというメッセージを発しているのに無視して、夜更かしをしていませんか?

 身体感覚が鈍っていたら、何を試しても体で起きる変化に気が付けないかもしれません。

 手間を惜しまず情報を集め、また、本来私たちが持っている“反応センサー”がきちんと働く状態で、自分の体に合うかどうかを確かめましょう。

西沢邦浩(にしざわ・くにひろ)

日経BP 総合研究所メディカル・ヘルスラボ客員研究員、サルタ・プレス代表取締役
小学館を経て、91年日経BP社入社。開発部次長として新媒体などの事業開発に携わった後、98年「日経ヘルス」創刊と同時に副編集長に着任。05年1月より同誌編集長。08年3月に「日経ヘルス プルミエ」を創刊し、10年まで同誌編集長を務める。18年3月まで、同社マーケティング戦略研究所主席研究員。同志社大学生命医科学部委嘱講師。