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今、最も気にしたいビタミンとは?

『日経ヘルス』『日経ヘルスプルミエ』の元編集長で、現在も食品関係を中心に多方面で活躍される、健康医療ジャーナリストの西沢邦浩さんを迎え、「食と健康」についてデータに基づいた情報を発信します。第2回目のテーマは世界的に注目度が高まっている『ビタミンD』について。冬を迎える前に知っておきたい、食と健康のお話です。

健康医療ジャーナリスト
西沢邦浩

まず質問です。

Q1.しっかり太陽を浴びていますか?
Q2.魚が好きですか?

2問とも「いいえ」という答えの方は要注意です。私たちの健康維持に欠かせないビタミンが不足している可能性があります。

このビタミンが不足した状態が続くとどんな病気にかかるリスクが高まるか、ざっと挙げてみましょう。インフルエンザなどの感染症、乳がん・大腸がんなどのがん、2型糖尿病、骨粗鬆症、心筋梗塞、うつ病、認知症などなど。病気だけではなく、筋肉量や体力が低下するという報告もあります。

2013年に発表された大規模な調査では、日本人でこのビタミンが不足域にある人たちが約8割にも達していることがわかりました。

さてこのビタミンの正体は―――ビタミンDです。

「ビタミンDがそれほど重要で、多くの人で不足しているなんて聞いたことがない」。そんな感想を持った方も多いのではないかと思います。

残念ながら日本では、栄養機能食品という種類の食品で認められている表示内容、「ビタミンDは、腸管でのカルシウムの吸収を促進し、骨の形成を助ける栄養素です」という働きくらいしか一般に知られていないのが現状です。

このたび、日本人の食事摂取基準が改訂されましたが、ビタミンDは摂取目安量(必要量)が上がりました。これまで、成人で1日5.5㎍(マイクログラム)だったのが8.5㎍になったのです。重要度が高いからこそ、不足が起きないよう、こうした改訂が行われたわけですが、世界を見ると、米国とカナダなどでは、成人で1日15㎍(71歳以上は20㎍)と、日本よりはるかに多い量の摂取が薦められているのです。

世界で注目されるビタミンD インフルエンザ感染リスクも低下

今、ビタミンDは、新型コロナが収束しない中、世界で最も注目されている栄養素といっても過言ではありません。

感染症から身を守るために欠かせず、不足しないようにすることでインフルエンザや風邪の発症リスクが下がったという研究も数多くあるからです。このような結果が出るのは、ビタミンDが、各種免疫細胞を活性化し、抗菌物質を作ったりする働きを持つため。

まだ確実といえるデータまではそろっていませんが、ビタミンD不足の人で新型コロナの感染率やかかったあとの重症化リスクが高くなっているという研究もすでに少なからず報告されています。

インフルエンザなどによる急性呼吸器感染症について、ビタミンDをしっかりとることでリスクが低下したというデータがあるので紹介します(下グラフ)。25の臨床試験を総合的に分析した結果です。ビタミンDをとった人たちはとらなかった人たちより発症リスクが12%低下しました(グラフの0.88と記された点)。しかし、試験前に調べたビタミンDの血中濃度が欠乏域にあった人たちでは、摂取することで42%もリスクが下がっています(グラフの0.58の点)。ビタミンD血中濃度が30ng/ml未満だと不足とされます。20ng/mlを切ると“欠乏”です。ほとんど太陽にあたらず魚も食べない人では、この研究の欠乏域の人たちの平均値10ng/mlにまで下がることは大いにあり得るので、注意が必要です。

今年は、インフルエンザと新型コロナ、風邪といくつもの感染症のリスクに備えなければなりません。今からビタミンDが不足しない生活を心がけましょう。

日差しが弱い冬は要注意 ビタミンD補給にはお魚を

では、ビタミンD不足を避けるためにはどうしたらいいのか。

それが冒頭のQに挙げた「太陽を浴びること」と「お魚を食べること」です(ちなみに、上のグラフの試験では毎日一定量をとってもらうためにサプリメントを使っています)。

ビタミンDは生きていくために重要なビタミンなので、ヒトは太陽の紫外線を浴びることで皮膚で作る能力を身に着けました。紫外線が強い夏期だったら、半袖半ズボンで15分も陽にあたれば、先に挙げた成人の必要量を超えるくらいのビタミンDが作られます。しかし、日差しが弱い冬になるとかなり長く外にいても十分な量を作るのは難しくなりますし、夏でも紫外線防御力が強い日焼け止めをしっかり塗っていると作られません。

自分の居住地で、今、どのくらい日光を浴びれば必要量が作れるのかがわかる国立環境研究所のサイトがあるので、関心がある人はチェックしてみてください(http://db.cger.nies.go.jp/dataset/uv_vitaminD/ja/mobile/index.html)。

紫外線から作る以外、ビタミンDの補給法は食品によってとる以外ありません。

そこでお魚です。

キノコにも含まれますが、ビタミンDを効率的にとるには、含有量が多く、ビタミンDが活性の高い状態で含まれているお魚が一番。紫外線から肌を守りたいという意識が強い人や、ほとんど日中外に出ないという人は、意識して食べるようにしましょう。下記にどんなお魚にビタミンDが多いか表にしました。

米国では、一番人気のサプリメントがビタミンDですが、それは、日本のようにいつでもどこででも新鮮なお魚が食べられる環境にない人が多いから。日本ならどこで暮らしていても、季節ごとに多様な種類のお魚が楽しめることを誇りに思うべきですし、この豊かな魚食文化をもっと大切にするべきではないでしょうか。

若い世代を中心に、年々お魚の摂取量が減っているのは残念なだけでなく、将来の日本の健康状態にも影を落とすことになりかねません。

それでも、生のお魚はちょっと、という方は缶詰でもOK。

このところ人気のサバ缶(水煮)100gで11㎍、イワシ缶(味付)だと同20㎍のビタミンDをとることができます。

家族の健康のために、一度、みんなでビタミンDについて調べてみてはいかがでしょうか。

ビタミンDの多い魚類(μg/100g)※

(データ:日本食品標準成分表2015年版(七訂)より)

※ビタミンD含有量は、日本食品標準成分表の改訂により、増減がある場合がございます。
目安としてお考えください。

西沢邦浩(にしざわ・くにひろ)

日経BP 総合研究所メディカル・ヘルスラボ客員研究員、サルタ・プレス代表取締役
小学館を経て、91年日経BP社入社。開発部次長として新媒体などの事業開発に携わった後、98年「日経ヘルス」創刊と同時に副編集長に着任。05年1月より同誌編集長。08年3月に「日経ヘルス プルミエ」を創刊し、10年まで同誌編集長を務める。18年3月まで、同社マーケティング戦略研究所主席研究員。同志社大学生命医科学部委嘱講師。