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『日経ヘルス』『日経ヘルスプルミエ』の元編集長で、現在も食品関係を中心に多方面で活躍される、健康医療ジャーナリストの西沢邦浩さんを迎え、「食と健康」についてデータに基づいた情報を発信します。第4回目のテーマは、受験シーズンにはますます気になる、脳の認知機能や老化と、食の関係です。

頭の老化を防ぐ夢の食品はある?

健康医療ジャーナリスト
西沢邦浩

「頭脳パン」をご存じでしょうか。

このパンの名前の強烈さも手伝って、子供心にも「そんなうまい話(都合のいいパン)はないんじゃないかな?」と半信半疑ながらも、心ひかれたものです。

どんなパンかを紐解いてみると、1960年に提唱された「通常の小麦粉にビタミンB1を100gあたり0.17㎎以上配合した“頭脳粉”」を原料にしたパン、というのが定義。

脳のエネルギー源であるブドウ糖の代謝にビタミンB1が不可欠なことから、ビタミンB1入りのパンを食べて、脳にしっかりエネルギーを供給しよう、というわけです。

ですから脳にエネルギーに供給した後は、やはり努力は不可欠ということですね。

今も製造しているメーカーがある懐かしいパン。この名前を見ると、思うように勉強がはかどらなかった昔の記憶も蘇り、ちょっと目の奥がむずむずしてきます。

さてでは、現代の医科学で脳の働きがよくなったり、その老化を防ぐことに役立つことがわかってきている食品や食品成分はあるのでしょうか?

脳の老化を防ぐためには、いろいろな食品を食べよう
偏りのある食生活を送らず、いろいろな食品を食べる方が脳にいい

まず基本として押さえておきたいのは、「多様性に富んだ食事をする習慣を持っている人ほど、脳の老化がゆっくりになるらしい」ということです。つまり、偏りのある食生活を送らず、いろいろな食品を食べる方が脳にいいのですね。

国立長寿医療研究センターが、40~89歳の日本人約1700人に脳のMRI検査を行って、記憶や空間学習能に関わる海馬と神経細胞が集まっている灰白質の容積を計り、2年後に再度同じ検査をして比べたところ、いろいろな食品を食べている人(食事多様性スコアが高い人)ほど海馬も灰白質も容積の減少が少なく、委縮も抑えられていたのです。

この結果は2020年秋に、栄養学分野の世界的な学術誌で発表されました。

2016年に結果が発表された、宮城県大崎市に住む65歳以上の男女1万5000人弱を7年間追跡した研究では、米、味噌汁、海藻、漬物、野菜、魚、緑茶といった日本食の代表的な食材をしっかりとる食生活をしている人ほど認知症の発症リスクが低いという結果が出ました。

これは、ただ日本食を食べているということではなく、日本食を構成するヘルシーな食材を幅広くとっている人でいい結果が出たとみるべきでしょう。

緑茶など抗酸化力が強い飲料や食品を意識してとる

なかでも脳の健康の味方になってくれそうな2大食品群が、色や香りの豊かな野菜・果物・お茶といった抗酸化力が強い食材と、脳にいい油DHA・EPAを含む魚です。

抗酸化力が強く私たちとの付き合いが長いものの代表といえば、日本人が毎日飲んできた緑茶ですね。前述した大崎市の人たちを追跡した研究を緑茶との関係だけに絞って分析すると、1日5杯以上緑茶を飲んでいる人たちの認知症発症率は、1杯未満の人たちに比べて27%低かったというのです。

色素や風味成分としてポリフェノール類を豊富に含む食品

世界の研究では、米国のある地域で50歳以上の人約2000人を20年間追いかけたところ、ベリー類、リンゴ、お茶などをあまりとっていない人たちでは、アルツハイマー病および他の認知症を発症するリスクが2~4倍も高かったという報告があります。どれも、色素や風味成分としてポリフェノール類を豊富に含む食品ですね。

ほかに、「玄米や全粒小麦といった全粒穀物」に多く含まれるフェルラ酸という抗酸化物質を多くとったら認知機能低下が抑えられた、ポリフェノールが多い「ダークチョコレート」を毎日食べたら認知機能が向上した、「ブルーベリー」をしっかり食べ続けたら記憶能が改善した、などの報告があります。

濃い色をまとっていたり、渋みや苦みなど味に個性がある野菜や果物にはたっぷり抗酸化成分が含まれていることが多いので、意識して食べるようにしましょう。

DHA・EPAだけでなくビタミンDにも注目

魚のDHA・EPAは有名ですね。 「おさかな天国」という歌を耳にしたことがない、という人はいないのでは? 「サカナを食べると~アタマがよくなる♪」というストレートな歌詞は一度聞くと忘れることができないほど印象的です。

DHA・EPAをとるなら魚食が一番

実際に、DHA・EPAを機能性成分として、記憶力、注意力、判断力などを維持するといった機能性をうたう機能性表示食品も数多く出ています。ちなみに、DHA・EPAと並んで多いのがイチョウ葉のポリフェノールを配合した商品。こちらは脳の血流を改善して、記憶力を維持する、という表示をされていますが、イチョウ葉は食品として食べられるものではないので、サプリメントが選択肢になります。

その点、DHA・EPAをとるなら魚食が一番。

中国で60歳以上の約7000人が参加した研究に世界の11の研究を加えて計3万4000人分のデータをもとに、魚食と認知症の関係を検証したところ、最もよく魚を食べる人たちは、最も食べない人たちに比べ約33%認知症発症率が低くなっていました。

三度目の登場になる大崎市の研究でも、魚の摂取量と認知症の関係を分析しています。やはり、一番よく魚を食べている人たちは食べる量が最も少ない人たちに比べて、16%認知症リスクが低くなっていました。一番多く食べている人たちは、女性で1日85.7g、男性で96.4gより多く食べている人たちなので、およそ毎日一切れ程度以上魚を食べているということになります。

また、魚食が脳にいい背景には、魚油だけでなく魚に多く含まれるビタミンDの影響もあるのではないかと思われます。

世界の5つの研究を分析したら、血液中のビタミンD濃度が欠乏域にある人は、通常域の人に比べて認知症リスクが1.54倍高かったという結果も出ています。ビタミンD不足を避けるためにもしっかりお魚を食べましょう。少し前のコラム「今、最も気にしたいビタミンとは?」も読んでみてくださいね。

しっかり体も動かして
体を動かすことも脳にはとても重要です

脳を守る働きが期待できる食品をとることも大切ですが、実は、体を動かすことも脳にはとても重要です。寒いからとこもりっきりになっていませんか?

運動と認知機能に関して調べた80もの研究を統合して分析した結果、どんな運動でもやれば効果があるが、複雑な動きを伴う運動や他のプレーヤーとのやり取りが必要なスポーツは、はるかに効果的ということがわかりました。

1日約10~20分の適度な身体活動を続けているだけでも認知機能にプラスというデータもありますが、少しでも長めに運動するようにしたほうが、より長い期間にわたって認知能力が守られるようです。

さあ、寒がっていないで体を動かしましょう。そして、心地よくお腹がすいてきたら、滋味あふれる野菜や果物、お魚もよりおいしく感じられることでしょう。

西沢邦浩(にしざわ・くにひろ)

日経BP 総合研究所メディカル・ヘルスラボ客員研究員、サルタ・プレス代表取締役
小学館を経て、91年日経BP社入社。開発部次長として新媒体などの事業開発に携わった後、98年「日経ヘルス」創刊と同時に副編集長に着任。05年1月より同誌編集長。08年3月に「日経ヘルス プルミエ」を創刊し、10年まで同誌編集長を務める。18年3月まで、同社マーケティング戦略研究所主席研究員。同志社大学生命医科学部委嘱講師。

食で改善、冬の大敵“冷え”と“乾燥”

『日経ヘルス』『日経ヘルスプルミエ』の元編集長で、現在も食品関係を中心に多方面で活躍される、健康医療ジャーナリストの西沢邦浩さんを迎え、「食と健康」についてデータに基づいた情報を発信します。第3回目のテーマは、これからの季節に必読!『食で改善、冬の大敵“冷え”と“乾燥”』です。

健康医療ジャーナリスト
西沢邦浩

漢方でも使われるショウガは優秀な冷え対策食材
漢方でも使われるショウガは優秀な冷え対策食材

葛根湯という漢方薬のパッケージをじっくり見たことがありますか?

この薬は「風邪の初期」に使う方が多いのではないかと思いますが、実は「肩こり」に対する効能もあります。要は、体を温めて不調を改善する処方だということです。

そしてこの処方には、食卓でもおなじみ、血流促進・温め作用を持つ食材・ショウガが入っています。

薬味などとして活躍してくれるショウガは、冬の冷え対策食品として優れモノです。

ショウガにはジンゲロールとショウガオールいう辛み成分が含まれ、この2成分にはどちらも熱を生み出す作用がありますが、ショウガオールの方がその力は強いようです。ショウガオールを増やす方法はショウガを加熱すること。ジンゲロールの一部がショウガオールに変わり、ショウガが熱を生む力が強くなるのです。

以前、編集長をしていた『日経ヘルス』という雑誌で実験もしましたが、煮込んだりしなくても、すり下ろすか千切りにしたショウガを電子レンジで1分ほどチンしただけでショウガオールが増えます。ショウガを薄く切るなどして天日干しておくのもショウガオールを増やす効果的な方法です。

冷えがつらいのは何といっても冬の朝ではないでしょうか。しかも朝は何かと忙しい。そんなときでも、ショウガをすり下ろして電子レンジでチン、それを味噌汁や紅茶に入れて飲むだけでも体が温まるのはうれしいですね。

ショウガをすり下ろして電子レンジでチン、それを味噌汁や紅茶に入れて飲むだけでも体が温まる

朝ショウガをとると体熱産生が上がり(熱をつくるために体がエネルギーを余分に使うモードになる)、この作用が3時間ほど続くとする研究もあります。つまり、朝ショウガをとることで、冷えが改善するだけでなく、太りにくい状態にもなる、といってもいいかもしれません。

これまでの研究を見ると、1回に10g(親指の第一関節くらいの大きさ)以上とると効果が実感できる人が多いようです。

ジンゲロールとショウガオールを機能性成分として「気温や室温が低い際に、末梢部位の体温を維持する」と記している機能性表示食品の甘酒も発売されています。

意外とおいしい⁉ 上半身と下半身を同時に温める「ショウガココア」

ここまでショウガについて説明してきましたが、実はショウガは上半身を温める作用が強いようです。だから、肩こりにいいんですね。以前、滋賀県立大学で熱産生力があるといわれる食品30種類以上を食べ、その後の体温上昇を調べる研究が行われました。

上半身を温める作用が一番強かったのはショウガでしたが、下半身を温める作用が一番強かったのはココアだったのです。

ココアの冷え改善作用に関しては、森永製菓も独自の研究を発表していますが、こちらは手と指先の体温上昇や血流改善を見ています。

上半身と下半身を同時に温める「ショウガココア」

欧州に住む人に尋ねたところ、スイスなどでも冬の時期にジンジャーココアを飲むとのことだったので『日経ヘルス』2005年末発売号に「ショウガココア」を特集し、“冷え対策の新定番”として大きく提案しました。このときは思ったほど反響がなかったもので、あまり喜ばれる組み合わせではなかったかなと、ちょっとがっかり。しかし、今、インターネットで検索すると「ショウガココア」は商品もいろいろ出ているし、いくつもおいしい作り方のレシピまでありました。是非この冬、お試しあれ。

欧州に住む人に尋ねたところ、スイスなどでも冬の時期にジンジャーココアを飲むとのことだったので『日経ヘルス』2005年末発売号に「ショウガココア」を特集し、“冷え対策の新定番”として大きく提案しました。このときは思ったほど反響がなかったもので、あまり喜ばれる組み合わせではなかったかなと、ちょっとがっかり。しかし、今、インターネットで検索すると「ショウガココア」は商品もいろいろ出ているし、いくつもおいしい作り方のレシピまでありました。是非この冬、お試しあれ。

ショウガ、ココア以外にも唐辛子やコショウなどのスパイス類、コーヒーや緑茶に多いカフェインも交感神経を刺激して熱産生を促します。3大栄養素の中で食後に熱を作る働きが強いのは肉などのたんぱく質。肉の中でも羊肉や鶏肉は熱産生パワーが強いとする研究もあります。冬はこうした食品も意識してとってはいかがでしょう。

「冷えにより低下した末梢血流を正常に整える」という機能性表示が行われている成分、温州ミカンやシークワーサーなどの柑橘に多いヘスペリジンも注目されています。食品に含まれるヘスペリジンはあまり吸収がよくないので、機能性食品にはその点を改良した成分が入っていますが、柑橘からとる場合は、小袋、中果皮(実と外皮の間の白い部分)にヘスペリジンが多いので、ここをむいて捨てずに食べましょう。

温州ミカンやシークワーサーなどの柑橘に多いヘスペリジンも注目
冷えは多くの不調のもと 放置せずに対策を

冷えは、西洋人に比べ熱を生み出す筋肉の量が相対的に少ない日本人はじめとする東洋人に多い症状。つらいだけでなく、ほかの不調の原因になる可能性もあるので放置は禁物です。

体温が低下すると免疫が低下するということもありますが、血のめぐりの悪さは、さまざまな不調とも関係が深いからです。

下のグラフは、15~69歳の男女約2000人を対象に、冬場の悩みや症状について質問した調査の結果。特に女性で多かったのは「冷え症」を含め、血流の悪さと関係が深い「肩こり・腰痛」「手足や腰の冷え」「乾燥による肌荒れ」でした。

冷えの解消には、温まる食品をとるだけでなく、運動などでしっかり筋肉を動かすことも忘れずに。

冬場の悩み・症状の多くが冷えと関わる

冬場の悩み・症状の多くが冷えと関わるグラフ

(ツムラライフサイエンス(当時)による調査、2009年)

肌荒れ・乾燥には、コラーゲン食品や整腸食品をプラス

もう一つの冬期の悩みといえば肌荒れ・乾燥でしょう。

前述の調査でもわかるように、血行の悪さは肌を乾燥させる要因のひとつです。そのため、めぐりをよくする食品は肌の保湿力を保つことにも役立ちます。

しかし、肌の乾燥対策には、さらに、肌のバリア機能の維持や保湿力を保つことに役立つ食品も重要です。

「肌のうるおいを保つ」という多くの機能性表示食品が出ていますが、血流促進作用によるもの以外を大きく二つに分けると、①肌の表皮や真皮を守り、構成する成分を作り出して保湿機能低下を防ぐ成分=コラーゲンペプチド、セラミド、グルコサミンなどと、②腸から肌の改善を図る成分=乳酸菌、ビフィズス菌などに分かれます。

①に関しては、コラーゲンが多い食品を食べることが、現実的な食事による対策といえそうです。私たちは、コラーゲンが多い魚でつみれを作り、それを食べることでコラーゲンが本当に吸収されるか、肌の調子がよくなるかを京都大学と一緒に調べたことがあります。すると、吸収をよくしたコラーゲンペプチドのサプリより少し低めだったものの、十分な量が吸収され、肌の保湿力が上がることが確認できました。 コラーゲンが多い食品には牛すじやうなぎ、鶏のヤゲン(軟骨)などがあります。

②の腸から肌の改善を図るには、ヨーグルトなど整腸作用を持つ発酵食品や食物繊維が多い食材をとるのがいいでしょう。ひどい便秘や腸の炎症があると肌の保湿力が低下することはいくつもの研究で明らかにされています。ですので、腸の効用菌(いわゆる善玉菌)が元気を失わないよう、そのエサである水溶性の食物繊維が多い食品を意識してとりましょう。水溶性食物繊維が多い食品には、大麦(押し麦やもち麦)、納豆、ゴボウ、海藻などがあります。

腸の効用菌(いわゆる善玉菌)が元気を失わないよう、そのエサである水溶性の食物繊維が多い食品を意識してとりましょう

肌のあれや水分蒸散を防ぐためには、肌の上からの保湿も不可欠。こまめに保湿ローションやクリームを塗り、バリア機能低下を防ぐことは、女性だけでなく男性も心掛けたい冬の習慣です。

西沢邦浩(にしざわ・くにひろ)

日経BP 総合研究所メディカル・ヘルスラボ客員研究員、サルタ・プレス代表取締役
小学館を経て、91年日経BP社入社。開発部次長として新媒体などの事業開発に携わった後、98年「日経ヘルス」創刊と同時に副編集長に着任。05年1月より同誌編集長。08年3月に「日経ヘルス プルミエ」を創刊し、10年まで同誌編集長を務める。18年3月まで、同社マーケティング戦略研究所主席研究員。同志社大学生命医科学部委嘱講師。

今、最も気にしたいビタミンとは?

『日経ヘルス』『日経ヘルスプルミエ』の元編集長で、現在も食品関係を中心に多方面で活躍される、健康医療ジャーナリストの西沢邦浩さんを迎え、「食と健康」についてデータに基づいた情報を発信します。第2回目のテーマは世界的に注目度が高まっている『ビタミンD』について。冬を迎える前に知っておきたい、食と健康のお話です。

健康医療ジャーナリスト
西沢邦浩

まず質問です。

Q1.しっかり太陽を浴びていますか?
Q2.魚が好きですか?

2問とも「いいえ」という答えの方は要注意です。私たちの健康維持に欠かせないビタミンが不足している可能性があります。

このビタミンが不足した状態が続くとどんな病気にかかるリスクが高まるか、ざっと挙げてみましょう。インフルエンザなどの感染症、乳がん・大腸がんなどのがん、2型糖尿病、骨粗鬆症、心筋梗塞、うつ病、認知症などなど。病気だけではなく、筋肉量や体力が低下するという報告もあります。

2013年に発表された大規模な調査では、日本人でこのビタミンが不足域にある人たちが約8割にも達していることがわかりました。

さてこのビタミンの正体は―――ビタミンDです。

「ビタミンDがそれほど重要で、多くの人で不足しているなんて聞いたことがない」。そんな感想を持った方も多いのではないかと思います。

残念ながら日本では、栄養機能食品という種類の食品で認められている表示内容、「ビタミンDは、腸管でのカルシウムの吸収を促進し、骨の形成を助ける栄養素です」という働きくらいしか一般に知られていないのが現状です。

このたび、日本人の食事摂取基準が改訂されましたが、ビタミンDは摂取目安量(必要量)が上がりました。これまで、成人で1日5.5㎍(マイクログラム)だったのが8.5㎍になったのです。重要度が高いからこそ、不足が起きないよう、こうした改訂が行われたわけですが、世界を見ると、米国とカナダなどでは、成人で1日15㎍(71歳以上は20㎍)と、日本よりはるかに多い量の摂取が薦められているのです。

世界で注目されるビタミンD インフルエンザ感染リスクも低下

今、ビタミンDは、新型コロナが収束しない中、世界で最も注目されている栄養素といっても過言ではありません。

感染症から身を守るために欠かせず、不足しないようにすることでインフルエンザや風邪の発症リスクが下がったという研究も数多くあるからです。このような結果が出るのは、ビタミンDが、各種免疫細胞を活性化し、抗菌物質を作ったりする働きを持つため。

まだ確実といえるデータまではそろっていませんが、ビタミンD不足の人で新型コロナの感染率やかかったあとの重症化リスクが高くなっているという研究もすでに少なからず報告されています。

インフルエンザなどによる急性呼吸器感染症について、ビタミンDをしっかりとることでリスクが低下したというデータがあるので紹介します(下グラフ)。25の臨床試験を総合的に分析した結果です。ビタミンDをとった人たちはとらなかった人たちより発症リスクが12%低下しました(グラフの0.88と記された点)。しかし、試験前に調べたビタミンDの血中濃度が欠乏域にあった人たちでは、摂取することで42%もリスクが下がっています(グラフの0.58の点)。ビタミンD血中濃度が30ng/ml未満だと不足とされます。20ng/mlを切ると“欠乏”です。ほとんど太陽にあたらず魚も食べない人では、この研究の欠乏域の人たちの平均値10ng/mlにまで下がることは大いにあり得るので、注意が必要です。

今年は、インフルエンザと新型コロナ、風邪といくつもの感染症のリスクに備えなければなりません。今からビタミンDが不足しない生活を心がけましょう。

ビタミンD摂取で急性気道感染症の発症リスクがデータ
日差しが弱い冬は要注意 ビタミンD補給にはお魚を

では、ビタミンD不足を避けるためにはどうしたらいいのか。

それが冒頭のQに挙げた「太陽を浴びること」と「お魚を食べること」です(ちなみに、上のグラフの試験では毎日一定量をとってもらうためにサプリメントを使っています)。

ビタミンDは生きていくために重要なビタミンなので、ヒトは太陽の紫外線を浴びることで皮膚で作る能力を身に着けました。紫外線が強い夏期だったら、半袖半ズボンで15分も陽にあたれば、先に挙げた成人の必要量を超えるくらいのビタミンDが作られます。しかし、日差しが弱い冬になるとかなり長く外にいても十分な量を作るのは難しくなりますし、夏でも紫外線防御力が強い日焼け止めをしっかり塗っていると作られません。

自分の居住地で、今、どのくらい日光を浴びれば必要量が作れるのかがわかる国立環境研究所のサイトがあるので、関心がある人はチェックしてみてください(http://db.cger.nies.go.jp/dataset/uv_vitaminD/ja/mobile/index.html)。

紫外線から作る以外、ビタミンDの補給法は食品によってとる以外ありません。

そこでお魚です。

キノコにも含まれますが、ビタミンDを効率的にとるには、含有量が多く、ビタミンDが活性の高い状態で含まれているお魚が一番。紫外線から肌を守りたいという意識が強い人や、ほとんど日中外に出ないという人は、意識して食べるようにしましょう。下記にどんなお魚にビタミンDが多いか表にしました。

米国では、一番人気のサプリメントがビタミンDですが、それは、日本のようにいつでもどこででも新鮮なお魚が食べられる環境にない人が多いから。日本ならどこで暮らしていても、季節ごとに多様な種類のお魚が楽しめることを誇りに思うべきですし、この豊かな魚食文化をもっと大切にするべきではないでしょうか。

若い世代を中心に、年々お魚の摂取量が減っているのは残念なだけでなく、将来の日本の健康状態にも影を落とすことになりかねません。

それでも、生のお魚はちょっと、という方は缶詰でもOK。

このところ人気のサバ缶(水煮)100gで11㎍、イワシ缶(味付)だと同20㎍のビタミンDをとることができます。

家族の健康のために、一度、みんなでビタミンDについて調べてみてはいかがでしょうか。

ビタミンDの多い魚類(μg/100g)※

ビタミンDの多い魚類(μg/100g)※のデータ

(データ:日本食品標準成分表2015年版(七訂)より)

※ビタミンD含有量は、日本食品標準成分表の改訂により、増減がある場合がございます。
目安としてお考えください。

西沢邦浩(にしざわ・くにひろ)

日経BP 総合研究所メディカル・ヘルスラボ客員研究員、サルタ・プレス代表取締役
小学館を経て、91年日経BP社入社。開発部次長として新媒体などの事業開発に携わった後、98年「日経ヘルス」創刊と同時に副編集長に着任。05年1月より同誌編集長。08年3月に「日経ヘルス プルミエ」を創刊し、10年まで同誌編集長を務める。18年3月まで、同社マーケティング戦略研究所主席研究員。同志社大学生命医科学部委嘱講師。

免疫を高める発酵食の力

『日経ヘルス』『日経ヘルスプルミエ』の元編集長で、現在も食品関係を中心に多方面で活躍される、健康医療ジャーナリストの西沢邦浩さんを迎え、「食と健康」についてデータに基づいた情報を発信します。第1回目のテーマは、「免疫を高める発酵食の力」。これをきっかけに、身近な食材を見直してみませんか?

健康医療ジャーナリスト 西沢邦浩

免疫にいいと人気の食品、ツートップは「ヨーグルト」と「納豆」
ヨーグルトの画像 納豆の画像

「発酵食は免疫にいいと思いますか?」と尋ねたら、おそらく7、8割の人は、「思う」と答えるのではないでしょうか。

実際、コロナ禍が始まってから、日本トレンドリサーチが実施した「免疫力を高めるために取り入れている食材」調査では、1位ヨーグルト(75.6%)と2位納豆(74.9%)がほぼ同率。3位の味噌(57.2%)を入れると表彰台はすべて発酵食品で占められ、4位のショウガ、5位のニンニクという“パワフルな野菜の代表“を超える支持を集めました。

では、その実力のほどはどうしょうか?

まず「ヨーグルト」。ご存知の通り、免疫機能に関与する主役は中に入っている乳酸菌やビフィズス菌といった有用菌です。こうした有用菌類が、急性上気道感染症(インフルエンザや風邪のウイルス感染で起こる鼻水、くしゃみ、鼻づまり、喉の痛みなどの急性症状のこと)に効果があるかどうかに関して、12件の臨床試験から総合的に分析した研究があります。コクランという国際的に定評のある健康医療情報の評価機関が行ったものです。

研究チームの総評は「ある程度効果的」というトーンでしたが、下記の表を見ると、十分効果が期待できそうですね。

ヨーグルトの有用菌類が、急性上気道感染症(インフルエンザや風邪のウイルス感染で起こる鼻水、くしゃみ、鼻づまり、喉の痛みなどの急性症状のこと)に効果があるかどうかに関して、12件の臨床試験から総合的に分析した研究のデータ

ただし、注意点があります。乳酸菌などを使って感染症の予防効果を確かめる研究は、そもそも準備段階の研究で「免疫に対する働きが確認された菌」が使われています。ですから、このデータから、すべての乳酸菌・ビフィズス菌含有商品に免疫維持作用があるとはいえないのです。

日本で発売されている商品に使われている菌で、ヒトの試験を行ってインフルエンザや風邪にかかるリスクを抑えたというエビデンス(科学的証拠)がある菌には下記のようなものがあります。

乳酸菌シロタ株、乳酸菌1073R-1、L.ロイテリ菌、ビフィドバクテリウム・ロンガムBB536、乳酸菌HK L-13株など。

正式な菌名で書きましたが、商品には略称が記載されています。どんな商品に入っているか、どんなエビデンスがあるのか、一度調べてみてはいかがでしょう。記事やだれかが発した情報だけでなく、自分の目で元のデータを確認し、判断する姿勢は消費者として非常に大切なことだからです。

ちなみにこうした有用菌は、①生きた菌が作る多糖や膜小胞という物質がウイルスなどの異物を攻撃する力を持つ免疫細胞を刺激するケースもあれば、②その菌自体が持つ成分が免疫細胞に働きかけるケースもあります。②の場合は、その菌が死んでいても効果を発揮します。

また、必ずしも「発酵食品」でなくとも、有用菌が入っていれば効果が得られる可能性がある、ということになります。

「免疫機能の維持に役立つ」とパッケージに表示された食品も登場

これからは、免疫に効果があるというエビデンスを持つ商品が選びやすくなりそうです。なぜなら、スーパーでも清涼飲料水や生鮮食品のコーナーなどで見かけることが多くなった機能性表示食品に「健康な人の免疫機能の維持に役立つ」という商品ジャンルが加わったからです。

その第1号となったのは、キリンのiMUSE(イミューズ)というシリーズ。消費者庁が8月7日に受理し、11月頃から清涼飲料タイプとサプリメントタイプの計5商品が順次登場することになっています(下記左はサプリメント、右は清涼飲料タイプの例)。

イミューズ サプリメントの画像 イミューズ 水の画像

この商品に続き、免疫維持に役立つとする商品が次々に登場してくると思われるので、今後の食品関連ニュースに注意してみてください。機能性表示食品は、研究分析データが消費者庁のホームページでオープンにされるのでだれでも見て確かめることができます。

消費者庁HP 機能性表示食品の届出情報検索ページのキャプチャ画像

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/search/

さて、ヨーグルトと並んで人気の高い発酵食品「納豆」の免疫パワーはどうでしょう。
残念ながら、まだ免疫を高めて感染症を防ぐことを証明した、確かなヒト試験は見当たりません。しかし、納豆菌が、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を攻撃するT細胞という免疫細胞の活性を高めるというマウスの試験はあります。

また、納豆の発酵過程で大量に作られるビタミンK2(メナキノン)という成分がありますが、この成分の血中濃度が低い人で、新型コロナの症状悪化がみられたというオランダの研究も報じられています。実は、納豆は世界的に見ても、ビタミンK2を最も多く含む食品の一つなのです。まだ証明できるほどのエビデンスはありませんが、納豆には何らかの免疫パワーが秘められている可能性はあるといっていいでしょう。

ほかの発酵食品についても同様で、免疫に対する効果がヒト試験で確かめられている食品は多いとはいえません。一方、発酵にかかわる菌類とそれが発酵の過程で作り出す物質の機能性はまだまだわからないことだらけです。

過信はいけませんが、実感がある発酵食品があるようなら、まずはとり続けてみてはいかがでしょう。そもそも食品の効果は、すべての人に同じようには現れません。だからこそ、どんなエビデンスがある食品でも、最後は、自分の体調や体の声に耳を澄ませ選ぶことが大切です。

あなた自身が体内で発酵を行って免疫を高めている⁈

ちょっと自分のお腹で手を当ててみてください。その掌の下に、私たち自身が持つ巨大な発酵器、腸があります。

腸の中には、私たちの体を構成する細胞数とほぼ同じくらいの約30~40兆個もの腸内細菌がいて、盛んに発酵活動をしています。おならも腸内細菌の発酵でできるガスです。

小腸には、体内に侵入してきたウイルスや細菌をとらえるIgA(免疫グロブリンA)といった抗体やインターフェロンなどの免疫物質を作り出す免疫細胞が多くいる場所があります。発酵食品に含まれる乳酸菌やビフィズス菌が働きかけるのもここ。

しかし、食品で入ってくる菌だけでなく、私たちの腸の中に住むビフィズス菌はじめとする有用菌が作る物質も、常時、腸の免疫細胞にメッセージを送り、免疫力の維持に役立っているのです。こうした免疫刺激物質の代表が短鎖脂肪酸。これは有用菌が食物繊維類をエサにし、発酵を行うことで作り出します。

なかでも、効率的なエサが水溶性食物繊維。水に溶ける性質を持つ、菌が食べやすい食物繊維です。日常の食生活に取り入れやすい食材で水溶性食物繊維を多く含むものには、大麦、ゴボウ、納豆、海藻類などがあります。ここでまた納豆が登場しました! つまり、納豆は私たちの腸の中で発酵を促す繊維も豊富な食品なのです。

腸内細菌のエサとなる食物繊維をしっかりとって、自分の腸の発酵活動に気を配ることも重要な免疫対策だということをお忘れなく。

西沢邦浩(にしざわ・くにひろ)

日経BP 総合研究所メディカル・ヘルスラボ客員研究員、サルタ・プレス代表取締役
小学館を経て、91年日経BP社入社。開発部次長として新媒体などの事業開発に携わった後、98年「日経ヘルス」創刊と同時に副編集長に着任。05年1月より同誌編集長。08年3月に「日経ヘルス プルミエ」を創刊し、10年まで同誌編集長を務める。18年3月まで、同社マーケティング戦略研究所主席研究員。同志社大学生命医科学部委嘱講師。

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